こんにちは!

名古屋市千種区にあります眼科東山公園クリニックです。

本日のブログは事務長が書かせて頂きます。

(少し固い内容になります)

先日、眼科の2大学会の一つであります臨床眼科学会に院長と参加してきました。

色々な学会発表を聞いている中で、CRAO(網膜中心動脈閉塞症)の話題がありました。

今回はせっかくなので網膜中心動脈閉塞症について書いてみたいと思います。

まずは網膜中心動脈閉塞症(CRAO)についてご説明させていただきます。
CRAOは急性緑内障発作と同じく急激な視力低下を引き起こし、最悪失明に至る非常に難治で重篤な病です。
具体的には、ある時突然痛みも何もなく視野の全体又は一部が真っ暗になり視力低下してしまいます。

人間ドックで頸動脈エコーをされた際に、頸動脈狭窄、プラークがあると指摘された方や、高血圧、高脂血症、糖尿病、不整脈、特に動脈硬化症がある方は注意が必要です。

網膜中心動脈とは、眼の中で枝分かれし網膜全体に広がって眼に栄養を供給するとても大事な役割を持っています。
この大事な網膜動脈が詰まっても、未治療で多くはその後血流は再開すると言われています。しかし、網膜の視力を担っている神経細胞が栄養が供給されなくても大丈夫な時間は、長くても数時間くらいしかありません。
この時間内に動脈の血流が再開し、網膜全体、特に神経細胞に栄養を供給できなれば、その後に血流が戻っても神経細胞は機能してくれません。

つまり、CRAOの治療は時間との勝負になります。
しかし、心筋梗塞の様な痛みがないため、なかなか緊急事態であることに気付かず、結果的に眼科へ受診するまでに時間がかかり高度な視力障害が残ってしまいます。このブログを読まれた方で、注意が必要な方は是非覚えておいて下さい。

ではこの病気の治療法として何があるかご紹介します。
血流を少しでも早く再開させるために、眼球マッサージ(目が見えない症状が出た場合に、いつでもやって良いということはありません)と同時に、眼圧を下げるために眼の中にある水(房水)を抜く手術、ダイアモックスの内服、血流を上げるためにマンニトール急速点滴、低酸素状態を改善するために高圧酸素療法を行うことがあります。
ただ、このような治療を行ったとしても視力が戻らない可能性もあり、どの程度の視力になるかは、発症時の血管の閉塞の程度と、発症から治療開始までに要した時間の長短で左右されます。

ここで今回の学会で発表されていたトピックとして、現在治験中の新しい薬剤であるKUS注射剤について説明したいと思います。
動脈の炎症がないCRAOの患者さんに対して発症48時間以内にこのKUS注射剤を使用することで、視力の改善が得られたという内容でした。
このKUS注射剤はCRAOだけでなく、将来的には網膜色素変性、緑内障などにも転用が期待されています。
時代の進歩と共に、かつては治療が難しかった病に対して光が見えた気がしました。

眼科東山公園クリニックでは地域の皆さまの大切な眼を守れる様、常に最新の治療や診断について今後も研鑽してまいります。
少しでもご自身の眼に違和感を感じた場合にはそのまま放置しないで、気軽にご相談頂ければと存じます。